デジタル化の進展が出版界の姿を徐々に変え、人々の読書環境が大きく変化する兆しを見せています。
新しい動きが毎週のように現れ、私たちはその解決策を見出すべく日々努力しています。
ただ、こうした短期的な視点から対応する一方で、10年後20年後の社会の望ましい姿とは何かを考え、
そのために出版界に何ができるかを考えていくべき、非常に重要な時期に私たちは立っています。
日本の出版界は、戦後一貫して成長を続けてきましたが、それも1996年を頂点にして
既に15年下降を続けています。それでもなお日本の出版市場は世界的に有数の大きさを持っており、
苦しいながらも出版関係企業は活発な活動を続けています。
これには、日本語環境が海外からの参入を防いできたということが挙げられます。
しかし、電子化の波は国境を越えて押し寄せており、日本の出版界は今後、
海外を相手に戦っていかなければなりません。
日本の社会はこれから急速に多言語化が進んでいくのではないかと思います。
そして、多元的な文化、多元的な価値に対応できる社会にならなければ、この国は生き残っていけないし、
意志としてそういう国を目指すべきではないかと考えます。
電子書籍端末は、そのような社会を目指すうえで出版界が貢献できる使い勝手の良い機械であるといえます。また、年齢や性別、言語を超えたコミュニケーションのための手段として相応しいものです。
本を読むということもまた、本と人とのコミュニケーションです。
人はそのコミュニケーションを通じて新たな価値を発見し、次の世代に伝えるべきものを新たに
表現していくのです。
出版界は今、たくさんの課題を抱えています。
出版物のデジタル化の進展の一方で、紙の出版物の流通はまだ圧倒的に主流であり、
そこに携わる人々の安定した活動を支えていかなければなりません。
最近、責任販売制や計画販売制という言い方で呼ばれる新しいビジネスのしくみが模索されています。
しかし、突き詰めていけば、本当に安心して売れる本がなければ市場の活況は望めません。
出版社の本分として、読者に受け入れられる本作りを片時も忘れてはなりません。
読書推進運動は、若者の活字離れを食い止めるために様々な活動を行っていますが、真の読書は、
人に強いられてするものではなく、自分から本を読みたいという気持ちを起こさせることであるのを忘れてはいけません。
出版活動の根幹である「出版・表現・言論の自由」はなにものにも代えがたいものであり、
私たち出版人が自ら出版物を線引きするようなことは何であれ、してはいけないことです。
出版物を規制するような立法の動きには断固反対していきますが、その一方で、厳しく我が身を律し、
自主規制を進めていかなければ社会の理解を得ることはできません。
本は未来を創る媒体そのものです。 過去と現在・未来を媒介し、日本と海外を媒介し、老人と若者を媒介し、 そして著者と読者を媒介していくのが本です。私たちはこの本に携わる業界にいる喜びを次代に引き継ぐため、 努力してまいります。 皆様のご指導ご協力を切にお願い申し上げます。