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著作権Q&A

※いずれの場合も、著作者と出版者の間にこれらに関する個別契約のないことを前提とします。非独占、独占、 出版権設定などの取り決めは著作者及び出版者の当事者間で自由に決められるものであり、その契約如何に よっては回答が異なるケースがあります。

著作権Q&A

1.引用・転載に関すること、利用許諾の取り方に関すること

出版物に別の出版物の内容を一部、引用したいと思います。どの程度であれば、自由に使っても構わないでしょうか?
 他人の著作物を利用する場合には、その著作物の著作権者の許諾を得て使うことが大原則です。しかし、著作権法では、いくつかの場合において、その許諾なしでも使うことを認めています。その中でも代表的なもののひとつが「引用」です。引用と認められるためには、長らく「主従関係」「明瞭区別性」という、最高裁判決によって判断された二つの要件が必要であるとされてきました。
 「主従関係」とは、他の著作物を引用することによって新たに作られる著作物が「主」、引用されるものが「従」の関係になることを言います。この場合、主従関係の有無は、引用するものとされるものとの間の内容の関係性によって判断され、必ずしも分量の多寡には依らないとされてきました。この考え方は今でも支持されていますが、最近の高裁レベルの判決で、より著作権法の条文そのものに引き付けて引用の解釈を行う例が出てきており、引用の基準については過渡期であるともいえます。
 具体的な案件に際しては、安易に引用であると思いこまず、慎重に判断をされることが必要です。 著作権Q&Aの先頭へ▲
第二次大戦後の焼け跡の写真を新刊書で使いたいのですが、自由に使っても構わないでしょうか?
 旧著作権法の下では、写真の著作権は発表後10年という非常に短い保護期間とされていました。これが、現行著作権法の施行にあたり延長されることになりましたが、法改正の審議が長引いたこともあって暫定的に延長がなされ、新しい著作権法が施行された昭和45年時点では、発表後13年となっていました。このため、昭和45年から13年を遡った昭和32年(1957年)までに公表された写真は、新著作権法の施行時点でまだ保護期間の範囲内であり、新しい保護期間である発行後30年の規定がその時点からは適用されることになりました。しかし、昭和32年1月1日以前に公表されていた写真は、新しい保護期間に引き継がれる前に保護が満了してしまったわけです。
 したがって、設問のように昭和20年代に撮影され公表された写真は、すべて保護期間が満了しており、著作権の許諾を得ずに使用することが可能です。また、外国の写真の著作物についても、日本国内での使用については日本の法律が適用されますので、同様に考えることができます。
 ただし、このように保護期間が切れた写真の中には、まだ存命の写真家が若いときに撮影した写真も含まれていることがあります。財産的な意味での著作権の保護期間が切れているとはいえ、著作者人格権は存続しています。このような写真の使用に際しては写真家への敬意を忘れてはいけないと思います。 著作権Q&Aの先頭へ▲
かつて師弟関係にあった複数の著者による共著書がありますが、著者同志の関係が悪化してしまっています。このたび、改訂版を出したいと思っていますが、一部の著者がどうしても改訂版発行に同意してくれません。その著者の執筆部分を別の著者にお願いして代わりに新たな原稿を書いてもらうことは可能でしょうか?
 問題の書籍は、複数の著作者がそれぞれ執筆した論文を編者(師匠筋に当たる教授でしょうか?)が一冊にまとめた体裁になっていると想像できます。この場合、個々の論文の著作権は独立していると考えられ、改訂版への掲載を許さない著者の論文を使うことはできません。しかし、その著者も自分の著作物ではないその他の部分についての権限は持っていないので、自分の論文が他の人のものに差し替えられてしまっても、それについて直接異議をはさむことはできません。結論としては、設問のように別の論文に差し替えて改訂版を出すことは著作権的には可能です。ただし、それによって初版との連続性が損なわれたり、全体の構成がいびつになったりという不都合が出てくることもあります。慎重な対応が望まれるところです。 著作権Q&Aの先頭へ▲
雑誌にある写真を使用しました。写真家とは長い付き合いなので特に契約書を交わしていませんが、「買取り契約」によると理解しています。この写真をこの雑誌の電子版でも使用したいのですが構わないでしょうか?
「買取り契約」という言い方は、今でも時折耳にしますが、これは場合によっては誤解を招きかねない表現なので、使用するときはその意味する契約内容を十分に理解した上で、契約の相手方との間で認識のズレが生じないように注意することが必要です。
 出版界で通常、「買取り契約」といわれているものは、著作権の譲渡契約を意味するのではなく、一回限りの原稿料(著作権使用料)の支払いで、その後、同一の出版物が発行されている限り、使用することができるという内容を指すことが一般的です。著作権自体は、あくまでもその著作物を創作した著作者の手許に留保されていると考えるべきです。
 さて、設問の電子版への利用ですが、紙媒体の雑誌とその電子版とは別の出版物であると考える方が良いと思います。これは、紙媒体の雑誌への掲載というのは、著作権のうち「複製権」の許諾を出版社が著作権者から受けて行う行為ですが、配信される電子雑誌では、これに「公衆送信権」という別の権利が加わることになるからです。したがって、電子版でも利用したいということであれば、紙媒体の雑誌を発行する際に、電子版での利用についてもあわせて許諾を受けておくことが原則です。
 もちろん、著作権は譲渡可能な権利ですから、著作権者が出版者に権利そのものの譲渡を行う場合もないとは言えません。しかし、その場合には、明確に譲渡である旨を明文で取り交わすことが必要であると思います。 著作権Q&Aの先頭へ▲

2.奥付に関すること

書籍の奥付にはどのような項目を記載すればよいでしょうか?
 奥付に関しては、現行法では何らの規定も存在しません。奥付をつけなければならないという規定すらないのです。もともと奥付は、第二次大戦前に出版物の検閲を行っていた関係で、発行者、印刷者等を明示することが当時の出版法によって求められた名残りであるといえます。
 しかし、現在では法的には規制されていないとしても、読者に対して出版物の発行の責任を明らかにするという意味で、奥付の存在は意味があると思います。
 最低限の記載内容としては、書名、著作者名、発行所名、発行年月日等があれば良いと思います。発行出版社名に並んで発行者として社長や編集担当役員の名前を記している例が多く見られますが、必ずしも必要ではありません。ただし、当該出版物の発行の責任を明確にするという意味はあるかと思います。 著作権Q&Aの先頭へ▲
©記号に続く表示はどのようにするのが正しいのでしょうか? Printed in Japanという表示はしなければなりませんか?
 ©記号は本来、著作権の国際的な保護を取り決めた代表的な条約である、ベルヌ著作権条約と万国著作権条約の橋渡しをするための記号として制定されました。ベルヌ条約では、無方式主義といって、著作権は著作物が成立した時点で自動的に発生するのに対し、万国著作権条約では登録によってはじめて著作権が認められるという制度(方式主義)を採用しています。そのため、ベルヌ条約のみに加盟している国の著作物を、万国著作権条約のみに加盟している国で保護しようとした場合、相手国でわざわざ登録手続きを行わなくてはならなくなってしまいます。これは大変不便なことであるので、無方式主義の国の著作物でも、方式主義の国で保護を受けられるように便宜的に登録に変わるものとして、©記号を付与することにしたものです。
 かつては、アメリカが万国著作権条約のみに加盟していたので、©記号は実質的な意味がありましたが、アメリカも1989年にベルヌ条約に加盟し、万国著作権条約のみに加盟している国もほとんどなくなったため、実質的な意味はほとんどなくなっています。ただし、著作権者を表示する方法としては、簡便であり、慣行としても普及しているため現在でも広く使われています。
 日本の法律においても、©記号については法律上には一切規定がありませんが、本来の表記方法としては、©マーク、著作権者名、第一発行年を並べて表示するのが正しい方法です。著作権者名であって、著作者名ではないので、著作権が譲渡や相続によって移転した場合には、移転後の著作権者を書くのが本来のあり方です。また、第一発行年は、その著作物が最初に発行された年であり、必ずしもその出版物の発行年ではありません。
 Printed in Japanの文言は、一般の商品におけるMade in Japan等の原産地表示と同様のものです。各国の関税法等によって、原産地表示がその国への輸入の要件になっていることがありますので、海外への輸出を想定している出版物については表示しておいた方が良いと思われます。 著作権Q&Aの先頭へ▲
無断転載禁止と奥付に書かれている本から、一部を引用することは可能でしょうか?
 「無断転載禁止」と表示されている本からでも、引用の要件を満たしていれば、著作権者の許可を得ずに引用することが可能です。
 逆に、このような表示がないからといって、引用の範囲を超えて転載することは著作権侵害に当たることは明らかです。日本の著作権法では、著作物は創作された時点で、何らの形式的な要件を必要とせず著作権が発生するので、保護期間の範囲内の著作物を著作権者に無断で使用することは、法律で定める例外(著作権の制限規定による場合等)を除き、禁じられています。
「無断転載禁止」との表記は、多くの場合、法律で認められていない無断複製を抑制するために、読者の注意を喚起する役割を期待したものと考えるべきです。しかし、「このような「無断転載禁止」という文言の有無の如何によって、法律上の効果が異なってくる場合があります。
 これは、著作権法第32条第2項で規定するものです。この規定では、国や地方公共団体の機関、独立行政法人等が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料や調査統計資料、報告書などは、説明の材料として用いる場合には原則、第1項の引用の範囲内であるかどうかを気にすることなく、新聞紙、雑誌等の刊行物に転載することができるとしています。ただし、これを禁止する旨の表示、つまり「禁転載」「無断転載禁止」の表示がある場合は自由には使用できず、許諾が必要になります。
 ただ、複雑なのですが、たとえ「禁転載」の文言があったとしても、32条第1項の引用の要件を満たすのであれば、許諾なしに使用することが可能です。 著作権Q&Aの先頭へ▲

3.出版契約に関すること

契約書に収入印紙の貼付は必要でしょうか?
 通常の出版契約書には、収入印紙を貼付する必要はありません。印紙税法上では、かつては、「無体財産権の実施に係る契約書」について、契約金額に関わらず200円の印紙税が課されていた時代がありましたが、1989年の消費税導入を機に印紙税法の改正が行われ、印紙貼付の必要がなくなりました。したがって、印刷媒体、電子媒体を問わず、著作権者から許諾を受けて著作物を出版する際の契約書には収入印紙は不要です。しかし、著作権の譲渡契約では、譲渡金額に応じて収入印紙の貼付が必要になりますので、日本では例は少ないと思いますが、著作権の譲渡を受けて出版を行う場合の契約書には収入印紙が必要になります。 著作権Q&Aの先頭へ▲
著者10人以上での共著書ですが、どのように契約書を交わしたらよいでしょうか?
 個々の論文の著作権は、それぞれの著作権者が独立して持っているので、出版契約も本来であれば、個々の著作権者とかわすべきです。しかし、一冊の出版物の中で、多くの著者と個別に出版契約書を取り交わすのは煩雑なので、著作者を代表する人を一人決めて、その人と契約を交わすケースも少なくないと思います。
 しかし、その著作権者代表となる人は他の人の著作権について、出版社と契約する権限を持っているわけではありません。著作権者代表として出版社と契約し、その契約の内容を他の著作権者にも及ぼそうと思ったなら、個々の著作権者から、代表に宛てて委任状を提出してもらい、著作権者全員の代理人として契約書を調印する必要があります。実務では、委任状を取ることまではなかなかできない場合も有るかと思いますが、少なくとも、個々の著作権者が、代表者が出版契約を締結すること、およびその契約内容について了解していることを何らかの方法で確認しておくことが最低限必要です。 著作権Q&Aの先頭へ▲
著者が死亡して著作権を遺族が相続することになりました。既存の契約書を相続人名義で書き換える必要がありますか?
 著作権は、著作者の死後50年間は保護されますので、著作者が死亡した場合は、著作権も、不動産や預貯金といった財産と同じくその遺族に引き継がれることになります。問題は、相続を受ける家族が複数存在する場合、誰が著作権を相続しているかということです。個々の著作物はそれぞれ独立した財産なので、理論的には作品ごとに別々の相続人に引き継がれることも可能ですし、現にそのように作品によって相続人を分ける例も時折はみられます。
 出版社にとって重要なのは、自社で発行している出版物に関わる著作権が、どの相続人に相続されているかを正しく知り、その相続人との間で出版契約を継続していくことです。故人との間で結んだ契約は原則としては相続人に継承されるので、新たな契約書を結び直す必要はありませんが、新たな権利者が誰になるのかについて、覚書等によって双方で確認することが必要です。 著作権Q&Aの先頭へ▲

4.著作者の所在に関すること

他社から発行された本で、既に重版されなくなって10年以上経過しているものがあります。この本から一部を新刊書で転載したいと考えています。元の出版社に問い合わせてみようとしましたが、移転先不明で連絡がつきません。著作者本人への連絡もできない状況です。どうしたらよいでしょうか?
 この状況では、この10年前に発行された本は今後も原出版社によって重版される可能性はなくなっているわけですから、事実上の絶版状態であるといえます。仮にこの出版社が倒産等の理由で存続しておらず、その事業を承継している者がいない場合には、著作権者との間で交わされた出版契約も消滅してしまっていると考えてよいと思われますので、転載する場合には、原出版社の了解が得られなくとも問題にはなりません。
 しかし、転載にあたっては著作権者の許諾が必要になります。しかし、このケースのように著作者の所在が不明で許諾を得られないという場合は少なくありません。その際の対処方法として、著作権法では文化庁長官による裁定により、著作物の使用を認めるという制度があります。詳しくは文化庁のホームページをご参照ください。
 (http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/)この制度を利用するためには、著作者の所在を探すために相当の努力を払う必要がありますが、従来と比較して、手続きも簡素化されていますが、やはり時間的な余裕をもって利用してください。
 このほか、実務としては、あとがき等で著作者の所在を探したが見つからなかったので、著作者本人あるいは関係者がいたら知らせてほしい旨を表示し、利用してしまうというケースも時折見うけられます。出版社として誠意を示しているわけですが、無許諾で利用していることに変わりはないので、その点を十分考慮されることが必要です。 著作権Q&Aの先頭へ▲

5.電子媒体への利用に関すること

最近の著作権法改正で、電子書籍にも「出版権」が認められたと聞きました。これはどのような意味があるのでしょうか?
 従来、著作権法に定められている「出版権」とは、著作権者と出版者との間の契約によって、一定期間、出版者がその著作物を独占的に出版することを認めるというものです。法律的に言えば、著作権者の持つ著作権の中の「複製権」の一部を、出版者に設定し、その出版者は契約期間中、「出版権者」として、出版の態様による複製を独占的に行うことができるというものです。すなわち、「出版権」という名はついていますが、これは出版者の権利ではなく、もともとは著作権者の権利であって、出版権設定契約があってはじめて、出版者は出版権を持つことができます。
 この出版権は、旧著作権法の時代、昭和9年の改正によって設けられた制度であり、当然、電子出版など存在していない時代ですから、紙の本のみを想定していました。この制度、昭和45年に全面改正された新著作権法にも引き継がれましたが、制度の内容はほとんど変化なく、約80年間存続してきました。
 今般の改正では、出版権を電子書籍(パッケージ型、配信型を共に含む)に拡大することを明記しました。これによって、電子書籍を流通・販売する際に働く、公衆送信権を出版者を出版者が独占し、かつ契約関係にない第三者に対しても出版権の主張をすることが可能になりました。 著作権Q&Aの先頭へ▲
紙媒体での新刊書について出版契約を結ぶ準備をしていますが、どのような契約書を締結すれば良いでしょうか? 電子書籍での発行の予定は当面ありませんが、将来は電子化も検討したいと思っています。
 新たに認められた配信型の電子書籍に係る出版権(ここでは便宜上「電子出版権」と呼びます)は、紙媒体およびCD-ROMやDVD等のパッケージ型の電子書籍とは、法律上では区別されています。これは、出版権の元になる権利が、紙媒体等では、複製権であるのに対し、電子書籍では、公衆送信権であるからです。
 出版権は、いったん設定してしまうと、契約期間中は著作権者本人であっても、その著作物を出版権者の許諾なく、他の出版行為に用いることができなくなるので、出版社としても実際には行う予定のない形態の出版までも独占してしまうべきではありません。これは、著作者から「権利の塩漬け」という言い方で批判の対象になる行為です。
 一方で、電子書籍市場の拡大とともに、出版社によっては、紙と電子を同時発行することを原則とするという社も増えてきました。各出版社の営業戦略の中で、電子書籍の位置付けがどうであるかによる問題ですが、このように同時発行(発効日に多少のズレはあるとしても)を原則としているなら、新たに日本書籍出版協会で作成した、出版権設定契約書ヒナ型(紙媒体・電子出版一括設定用)のような形の契約をお勧めします。
(http://www.jbpa.or.jp/pdf/publication/hinagata2015-1.pdf) 著作権Q&Aの先頭へ▲
発行してから数年経っている書籍を今回、電子書籍としても発売したいと考えています。著作権者とどのような契約を結べばよいでしょうか?
既に発行している書籍を電子化する場合には、書協作成のヒナ型のうち、配信型電子出版設定用のようなタイプの契約が適当です。
(http://www.jbpa.or.jp/pdf/publication/hinagata2015-3.pdf)
 その書籍の主たる著作権者との契約によって、それまでの紙媒体における独占権に加え、配信型電子書籍についての独占権を出版社として持つことができます。
 ただ、既刊書の電子化において注意すべき点としては、一冊の書籍には主たる著作物の他に、様々な著作物を利用していることが多いということです。挿入された写真、図版、表紙に使用したイラスト等にもそれぞれの著作権が存在している場合が多いのですから、これらの権利処理も電子化にあたっては必要になります。 著作権Q&Aの先頭へ▲

6.剽窃・無断使用など著作権侵害に関すること

当社で発行している書籍と同じタイトルの本が最近他社から出されました。内容は全く異なるのですが、読者の中には間違えて買ってしまった方がいて苦情を受けました。同じタイトルの書籍の発行をやめさせることができるでしょうか?
 書籍の題号(タイトル)は、一般的には著作権の対象ではないとされています。したがって、単に同じタイトルの本が出たということだけでクレームをつけることは難しいかもしれません。ただし、同じ著者が他社であきらかに類似するような出版物を発行することについては、あらかじめ出版契約書で制限しておくことができます。
 また、タイトルだけでなく装幀や体裁等が似通ったものを販売することは、不正競争防止法で禁止する行為に当たる場合があります。この場合、デザイン、名称、ロゴマーク等、商品や営業を表示するものが一般によく知られていること(周知性)、模倣商品と混同のおそれがあること(類似性)が要件として必要です。 著作権Q&Aの先頭へ▲
当社で発行したノンフィクション作品は、これまで埋もれていた事実を著者が時間と労苦をかけて取材をして発掘したものです。ところが、その事実をそのまま土台にして書かれた新しい小説が他社から発行されました。当社の著者の苦労にただ乗りされたようなもので釈然としません。何等か抗議することが可能でしょうか?
 著作権法によって保護されるのは、創作的な表現です。一方で、過去に起こった事実そのものは、それを発見するために以下に労力や費用を投じたとしても、著作権法によって保護されるものではありません。
 たとえば、ある年、ある場所に数人の要人が集まり、その後の国の方針についての重要な取り決めが行われたという事実を、初めて発見した人がそれを自身の著作物で世に問うたとしても、その事実を述べることがその著者の独占になるものではありません。その事実は、社会が共有するものとなり、さらに別の著者による研究が深められていきます。
 このように「事実」を独占することはできませんが、その事実をどのように書き表すかという「表現」は著作権法によって保護されます。したがって、ノンフィクション作品の中で、過去に起こった事実を自らの視点を持ち、自らの表現によって作品にした場合、そこで用いられた表現がそのまま、あるいは極めて類似した形で使われた場合には著作権侵害を主張することが可能です。
 このケースの場合、小説の中に、元のノンフィクション作品で使われた表現がそのまま使われているかどうかが問題になります。単に設定や登場人物が同じということだけでは、著作権侵害とはいえないと考えられます。全く同じ表現ではないが似通っているという場合は判断が難しいところで、最終的にはケースバイケースにならざるを得ませんが、誰が書いても同じにしかならない事実のみを記した部分については、著作物性が否定されることもあります。 著作権Q&Aの先頭へ▲

7.複写利用に関すること

ある学校で当社の書籍を複写して教材に使っていることが判明しました。このようなことが許されるのでしょうか?
 著作権法では、著作物を著作権者の許諾なしに自由に使うことを一定の条件を満たした場合に認めています。これは、「著作権の制限規定」と言われるものですが、その中に、学校等の教育機関での利用というものがあります。教師あるいは児童生徒・学生本人は、その授業の過程で使用するために、必要と認められる限度内に限り、公表された著作物を複製することができます(法35条第1項)。詳しくは、権利者団体10団体が共同で作成した、「学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン」(2004年3月)をご覧ください。
(http://www.jbpa.or.jp/pdf/guideline/act_article35_guideline.pdf)
 このガイドラインでも詳しく書かれていますが、35条1項には但書があり、「当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には、自由な複製はできないこととされています。例えば、本来、生徒一人一人が購入することを想定して作られているドリル等をコピーして利用すること、一冊まるごとをコピーすること、一連の授業が終了した後も教室に恒常的に備え付けること等は認められていません。 著作権Q&Aの先頭へ▲

8.海外の著作物の利用に関すること

1970年以前に海外で出版され、その後現在まで日本で翻訳出版されていない本は自由に翻訳出版することができるということを聞いたことがありますが本当でしょうか?
 これは「翻訳権の十年留保」という制度です。
 国際的な著作権条約の中でも最も歴史の古いベルヌ著作権条約は、1886年にスイスのベルンにおいて創設されましたが、当初は、翻訳権の保護期間は原著作物発行後10年間でした。その後、1928年にローマで改正条約が締結され、その時点で翻訳権の保護期間も通常の著作権の保護期間と同様になりました。しかし一方で、加盟国の中で特に望めば、それまでの翻訳権の保護期間を10年間で留保することも認められました。これが翻訳権10年留保の起こりです。日本はこの翻訳権10年留保をその後、1970年の著作権法全面改正時点まで維持していました。現行の著作権法ではこの規定は本則からは削除され、翻訳権は通常の著作権の保護期間と同様、現在は死後50年間の保護を受けることになりました。しかし、旧法時代に発行されていた原著作物に限っては、経過措置として、1970年以降も10年留保の規定が適用できることになっています。
 つまり、設問にあるとおり、1970年以前にベルヌ条約加盟国で発行された著作物がその後10年間日本語による翻訳出版がなされていない場合、それ以降は翻訳出版は自由となります。なお、注意すべきは、アメリカは1970年時点ではベルヌ条約には加盟していませんでしたが、サンフランシスコ平和条約締結時に特例として、アメリカの著作物にも翻訳権10年留保が適用されることになりました。
 この翻訳権10年留保は、「翻訳出版」の有無を判断基準としている制度であり、しかも紙媒体の出版物しかなかった時代の遺物であるので、電子書籍には及ばないと考えられています。つまり、電子書籍で出版する場合には、著作権が存続しているなら、いかなる場合でも原作者の許諾が必要であるということです 著作権Q&Aの先頭へ▲
著作権の保護期間は日本国内では著作者の死後50年間ですが、海外の著作物についても同じでしょうか? 発行された国によって保護期間の長さが違うと聞いたことがありますがどのようになっているのでしょうか?
 著作権の保護期間は、ベルヌ著作権条約等の国際的な著作権条約によって、その加盟国が守るべき最低限の期間を決めており、ベルヌ条約では著作者の死後50年間となっています。しかし、条約で定める保護期間よりも長いものを各国の国内法で定めることは可能です。現実に既に多くの国では、保護期間を死後70年としています。EUにおいては、ディレクティブ(指令)によって、EU域内諸国の保護期間は70年以上としています。しかし、日本のように死後50年という定めを存続している国もまだ少なくありません。
 ベルヌ条約では、保護期間の異なる国の著作物を相互に保護する際のルールとして、いずれか短い方の期間をそれぞれで保護すればよいとしています。これは相互主義と呼ばれます。例えば、70年の保護期間を持つフランスと50年の日本の間でいうと、日本国内でフランスの著作物を使うときは原則50年間を保護すればよく、反対にフランスで日本の著作物は50年間の保護で良いということです。 著作権Q&Aの先頭へ▲
海外の著作物については、戦時加算という制度があって、原則よりも長く保護しなければならないと聞いたことがあります。どのようなものなのでしょうか?
 海外の著作物の保護に関しては、日本は世界的にも珍しい規制に服しています。これは、戦時加算という制度です。第二次世界大戦において、1941年12月8日の太平洋戦争の宣戦布告から1951年にサンフランシスコ平和条約締結までの期間は、日本と交戦状態にあった旧連合国の著作物は実質的に著作権保護がなされていなかったとの理由から、この期間を懲罰的に通常の保護期間よりも長く保護しなければならないとされています。
 したがって、先ほどのフランスの例でいえば、原則ならば50年間で良いところを、死後60年強の期間、保護しなくてはなりません(戦時加算は日割りで計算されますので、平和条約の締結日によって、若干の差があります)。
 これは旧連合国の著作物が対象になるので、同じ敗戦国であったドイツやイタリア、中立国であったスイスやスウェーデンの著作物には適用はありません。
 また、アメリカの著作物に関しては、写真や絵画の複製、原文のリプリントについては戦時加算が適用されますが、翻訳権については適用がする必要がありません。これは、アメリカと日本の間では戦前から相互に翻訳自由とする二国間協定があり、これが平和条約締結まで存続していたことによります。 著作権Q&Aの先頭へ▲

9.読み聞かせや図書館等での使用に関すること

ボランティアグループですが、図書館で絵本の読み聞かせの会を企画しています。読み聞かせをしてくれる会員に交通費の実費を払いたいのですが、そうすると、本の作者の許諾を得なくてはいけなくなると聞きました。本当でしょうか?
 絵本等の著作物を公衆に向かって朗読する行為は、著作権法では、口述権の対象になり、著作権者の許諾を得る必要があります。ただし、例外的に、非営利かつ無料で、朗読者に報酬を支払わない場合には、許諾なしに行うことができるとされています(法38条第1項)。
 この報酬に、交通費が当たるかどうかという問題ですが、書協で作成しているガイドライン「お話会・読み聞かせ団体等による著作物の利用について」では、朗読者やボランティアへの交通費や昼食費の支払いやその他、実費に相当するものであれば、「報酬」には当たらないとの判断をしています。したがって、設問のように交通費の実費を支払うのみという場合には、許諾なしに読み聞かせ会を行うことができます。 (http://www.jbpa.or.jp/pdf/guideline/all.pdf) 著作権Q&Aの先頭へ▲

10.TPPに関すること

TPP協定を日本が批准することに伴って、著作権の保護期間が著作者の死後50年から70年に延長されると聞いています。2016年に著作権が切れる作者については、仮に2017年に改正著作権法が施行された場合、さらに保護期間が20年伸びるのでしょうか?
 著作権の保護期間は、個人の著作者の場合、その死亡した年の翌年の1月1日から起算して満50年を経過した年の12月31日まで存続します(団体名義のものは、公表された年の翌年の1月1日から50年間です)。したがって、保護期間の延長を定める法改正の施行日は、その法律が成立した日の翌年の1月1日からとなるのが普通です。また、保護期間の延長に際しては、一度切れたものが復活することはないのが原則です。つまり、設問に対する答えとしては、法改正が行われていない現時点ではあくまでも推測ではありますが、2016年末で保護期間が終了した著作権が、2017年に復活してさらに20年保護されるということはないと考えてよいと思います。 著作権Q&Aの先頭へ▲
TPP協定の合意内容を受けて、保護期間が70年間に延長された場合、現在、日本が負っている戦時加算の義務もそのまま加わって、実質的に80年間余りの保護を行う必要が出てくる場合があるのでしょうか?
 上記設問8.でも説明していますが、戦時加算は、TPP協定に直接関わる事項ではなく、第二次大戦後のサンフランシスコ平和条約において取り決められているもので、この条約内容を現在修正することは事実上困難です。ただし、今回のTPP参加国のうちで、日本との間で上記平和条約を締結しているアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと日本は交換文書において、戦時加算制度の存在を認めた上で、「個別の著作権を集中管理する団体と影響を受ける権利者との間の産業界主導の対話を奨励し、歓迎する」としています。しかし、著作物を出版物として発行する場合の著作権処理は、集中管理ではなく、個々の権利者と出版社間の契約によることがほとんどであるので、戦時加算は事実上存続してしまう可能性が高いと思われます。また当然のことですが、TPP協定に関与していない、イギリス、フランス等欧州各国との関係でも、戦時加算は従来通りの扱いとなります。 著作権Q&Aの先頭へ▲
TPP協定の中で、「著作権侵害行為の非親告罪化」ということが求められていると聞きました。これは、著作者や出版社の活動に関してどんな影響があるのでしょうか?
 著作権が侵害された場合の対策としては、損害賠償や差止請求等の民事的な救済手段を取ることができますが、これに加えて、著作権法では刑事的な罰則を定めています。例えば、著作権、出版権、著作隣接権を侵害した者には、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金のいずれかあるいはその両方が課される場合があります(著作権法119条)。この罰則は、警察による摘発を受けて検察庁が起訴を行い、裁判所で刑が確定することによって課されることになりますが、著作権法ではこの著作権侵害に対する罪は、権利者からの告訴がなければ公訴を提起することができないとされています(同123条)。
 今回のTPP協定では、一部の悪質な侵害行為については、この著作権者の告訴を待たずに、公訴提起ができるようにすることが求められています。
 これに対しては、コミックマーケット等の二次創作に携わっている人や取材活動を行っているジャーナリズムの現場等から、捜査機関の恣意によって取締りが強化される恐れがあり、それによって萎縮効果をもたらすのではないかとの懸念が表明されています。
 TPP協定に関連する著作権法の改正について審議を行っている、文化審議会著作権分科会では、二次創作に対して萎縮効果を及ぼさないよう配慮して必要な改正を行うべきである旨の基本的な考え方をとりまとめています。具体的にどのような条文になるかは未定ですが、法律改正案は2016年の通常国会に上程される可能性が高いと思われます。 著作権Q&Aの先頭へ▲

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