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協会の概要

理事長挨拶

理事長 小野寺優

 日本には千年を遥かに超える、世界でも稀有な書物の歴史があります。 古来、日本人は本を通して多くの知識を得、思索を深め、心を育んできたのです。 そして、そんな身近な存在である本を出版界はずっと支えてきました。
 しかし今、出版界は多くの深刻な課題に直面しています。物流問題をはじめとして、 低迷を続ける売上問題、教育に関する補償金制度、海賊版への対策と著作権制度の普及啓発、 消費税の軽減税率適用への要望、図書館との連携の在り方、また海外市場の拡大やデジタル市場への新たな取組みなど、 枚挙に暇がありません。そしてこれらの課題が解決されないと、出版社は、身近な存在であるはずの本を刊行し続けることや 読者の元に届けることすら出来なくなるかもしれないのです。 しかし、その多くは出版社一社で解決できるようなものではありません。 私たち日本書籍出版協会は書籍出版界を代表する組織として、率先してそれらの課題に取り組み、その助けになる組織でありたいと考えています。

 当協会は大小さまざまな規模の出版社で組織されています。 各出版社は多彩な分野を網羅し、個性豊かな出版活動を行っています。そして当協会は、 その多彩な出版社が、共有する課題についてそれぞれ自由に意見を述べ、知恵を出し合える「場」でなければなりません。 当協会がそのような「場」であり続けることが、課題解決への糸口となり、結果として出版活動の根幹である 「出版・表現・言論の自由」や、豊かで多様な日本の出版文化を守ることにつながると考えるからです。

 また、当協会が取り組むべき役割として、「読者」、正確にいえば「潜在的な読者」に、 本の情報や読書の喜びを広く伝えることがあります。出版物の売上が長年にわたって低迷を続け、「活字離れ」や 「出版不況」という言葉が連日のように飛び交う中、いつの間にか、本の世界に生きる私たち自身が、それを当然のこととして 受容するようになってしまいました。しかし、何か災害が起きた時、人々は必ずと言っていいほど書店に足を運びます。 電子書籍は売上を伸ばしていますし、SNSやテレビ番組等をきっかけとしてベストセラーになっている本も数多くあります。 読者や読書時間が減っているという統計は事実ですが、それはメディアの多様化が進み、情報を得るための手段が大きく変わる中で、 出版界が本の情報や読書の喜びをうまく伝えられていないからではないでしょうか。 本の形は時代とともにさらに多様化するかもしれませんが、水面下には本に期待し、きっかけさえあれば本を読みたいと思っている方が たくさんいるのではないでしょうか。本の世界に生きる私たちがそれを信じなければ何も始まりません。もう一度出版の原点にかえり、 「本の情報や読書の喜びを広く発信すること」そして「出版社が精魂込めて作った本を一冊でも多くの方に届けること」について 当協会としてできることを模索して参りたいと思います。

 本は未来を創る媒体そのものです。 過去と現在・未来を媒介し、日本と海外を媒介し、老人と若者を媒介し、 そして著者と読者を媒介していくのが本です。私たちはこの本の役割を、そして本に携わる業界に生きる喜びを次代に引き継ぐため、 努力して参ります。皆様のご指導ご協力を切にお願い申し上げます。

一般社団法人 日本書籍出版協会
理事長 小野寺 優
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